■ 簿記の処理を学ぼう ■

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■ 簿記上の取引 ■

 それでは、そろそろ簿記の具体的な処理を見ていきましょう。まずは取引(とりひき)からみていきます。一体取引とは何でしょうか?一般的に皆さんが思われている取引と簿記上でいう取引はほとんど同じです。

 商品を売上げたとか、現金を借り入れたとか、建物を購入した等すべて簿記上においても取引となります。それでは一体「簿記上の取引」と一般に使われている「取引」とは何が違うのでしょうか?

 それは、簿記上の取引とは先ほど貸借対照表において学んだ資産・負債・資本の各項目の増減に影響を及ぼすものを指すのです。言い換えれば、これらの項目の増減に全く関係のない事象は簿記上は取引とは言わないのです。

 とりあえず具体例を出してみましょう。

 例1. 会社の倉庫が火災により中に置いてあった商品が全焼した。

 例2. 本日当社は、得意先と商品売買契約を結んだ。


 いかがでしょうか?上記の例でどちらが簿記上の取引だと思いますか?実は例2の事例は簿記上では取引とは言いません。例1が簿記上の取引になります。意外でしたか?順番に見ていきましょう。

 まず例1ですが、火災により商品と倉庫が全焼しています。難しいかもしれませんが、商品・倉庫は共に資産項目です。火災により全焼していますので共に価値はゼロ円になります。つまりこれは資産の減少に該当します。(簿記上の取引)

 次に例2ですが、実際には取引と呼んでいますがこれは簿記上では取引とは呼びません。難しくなりますが、簿記では実際に商品を引き渡したときに収益を認識しているので単に契約書を交わしただけでは取引とは言わないのです。

 最後に難しい事を書いてきましたが、あんまり深く考えないで次に進めて下さい。無責任に聞こえますが、簿記は頭で考えるよりも体で覚えていくものですから。

■ 仕 訳 ■

 それでは、仕訳(しわけ)について見ていきましょう。仕訳も簿記を学ぶ上では大切な用語です。頑張って身につけましょう。

 仕訳とは、何でしょうか?簡単にいうと、先ほど学んだ簿記上の取引を帳簿に記録するための表現方法だと考えてください。つまり、「4月1日現金10万円を銀行から借りた。」などの簿記上の取引をそのまま帳簿に書いていると日記みたいになり見難くなります。それを仕訳という表記方法に翻訳するのだと考えてください。簿記上の取引は、借方と貸方の両方に記録します。これは、複式簿記を前提としている以上借方が増減すると貸方も増減するのです。

 それでは、借方項目と貸方項目をおさらいしてみましょう。

 借方項目 資産項目(貸借対照表項目)、費用項目(損益計算書項目)

 貸方項目 負債・資本項目(貸借対照表項目)、収益項目(損益計算書項目)


 その次に仕訳の書き方を見てみましょう。

 例1.(現金)100,000  (借入金)100,000

 この例は、現金10万円を銀行などから借り入れた場合を仕訳で表したものです。左側を借方、右側が貸方です。(仕訳上のルールです。)この例を細かく見ていきましょうか。

 まず、現金は資産項目ですので借方項目です。仕訳では、借方に現金10万円となっているので素直に現金が増えた。つまり資産の増加になります。次に借入金は負債項目ですので貸方項目です。仕訳では、貸方に借入金10万円となっているのでこれも素直に借入金が増えた。つまり負債の増加になります。

 例2.(借入金)100,000  (現金)100,000

 今度は逆パターンの仕訳です。さっきの借入金を返済した時の仕訳を表したものです。この例を細かく見ていきましょう。

 まず、仕訳の借方(左側)を見てみますと、借入金10万円となっています。「待てよ、借入金って貸方項目じゃなかった???」って思われたかもしれませんが、この場合は貸方項目である負債の減少を表しているのです。これが理解できると仕訳の貸方(右側)も簡単に理解できるでしょう。資産項目である現金が仕訳では貸方に書いているという事は現金の減少、つまり資産の減少を表します。

 例題をまとめてみます。例1では、資産(現金)が増えて同時に負債(借入金)も増えた。例2では、負債(借入金)が減って同時に資産(現金)も減った。簡単にいうとこうなります。複式簿記では、借方(右側)が増減すると必ず貸方(左側)も同じように増減するような関係にあります。まさに天秤みたいですね。

 以上の事から最終的に、仕訳のルールが存在する事に気付くと思います。つまり以下のようになります。

仕訳の法則


 左のイラストを見てください。通常考えられる仕訳をパターンで表しています。

 左側が、仕訳の借方。右側が、仕訳の貸方です。青色の文字で書かれているのは借方項目(資産・費用)、赤色の文字で書かれているのは貸方項目(負債・資本・収益)です。

 しかし、最後に興ざめするような事を言いますがこのイラストを見て大まかに理解できればそれでいいと思います。間違っても丸暗記なんかは絶対にしてはいけません。仕訳を切る(仕訳を行うこと。)のに、いちいち資産項目の増加だの負債項目の減少なんか考えている人はいないでしょう。(特に試験中にそんな事考えている人は1人もいないと思います。)くどいですが、仕訳は体で覚えるものだと思います。

仕訳の法則2


 左のイラストは更にまとめたものです。具体的にはこの4パターンの仕訳しか存在しない事になります。そう考えると仕訳って簡単ですかね?!

■ 勘 定 ■

 さて、それでは勘定(かんじょう)を見ていくことにしましょう。勘定って一体何なのでしょうか?

 今までの学習から、まず簿記上の取引となるものを把握して仕訳を切ります。例えば、○月○日に現金が××円増えたとか△月△日に現金が××円減ったとかは、仕訳帳(仕訳を切るごとに記録していく帳簿。すべての仕訳が記録されている。)から分かるのですが今現在現金が幾らあるのかはひと目では分からないのです。それを補うための集計表を勘定といいます。

現金勘定

 左のイラストを見てください。資産項目である現金の集計表、現金勘定を表したものです。単位は円です。

 細かい事は抜きにして借方(左側)に残高があることがすぐに分かりますね。ちなみに現金は資産項目ですから必ず借方残になります。

 参考までに現金勘定の詳細を見てみましょう。読み飛ばして次に進めて頂いても構わないですよ。4月1日を期首として今現在を10月1日とでもしておきましょうか。

 ■期首において現金が10,000円あったことが分かります。

 ■5月1日に現金で買掛金を7,000円支払った。
   (買掛金)7,000   (現金)7,000

 ■6月1日に現金15,000円を借り入れた。
   (現金)15,000   (借入金)15,000

 ■8月1日に売掛金7,000円を現金で受け取った。
   (現金)7,000    (売掛金)7,000

 ■9月1日に借りていた現金15,000円を返済した。
   (借入金)15,000  (現金)15,000

 ■10月1日現在現金勘定の借方に10,000円の残高があることが分かります(10,000円の借方残)。

 ここでのポイントは、仕訳と同時に勘定にも記入しているという事です。
 順番は、仕訳→勘定記入となります。転記(てんき)するともいいます。例えば5月1日に上記の仕訳を切ると同時に現金勘定の貸方(右側)に7,000円を記入するのです。(現金の減少。)そして注意して欲しいのが買掛金勘定の借方にも7,000円を転記するという事です(買掛金の減少、つまり負債の減少)。現金だけに注目していたので忘れがちになりやすいですね。

 最後に結論です。資産項目・費用項目・負債項目・資本項目・収益項目の各項目の増減明細を箱のように表したものを勘定というのです。

 重複しますが、資産・費用の借方項目は必ず借方残高となり、負債・資本・収益の貸方項目は必ず貸方残高となります。


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