一夜漬けで覚える材料費会計(日商簿記2級対策)

こちらは第134回日商簿記検定2級用工業簿記・原価計算の対策講座になります。
特に第4問で個人的に材料費会計を推しています。ですから今回はこちらを重点的にイメージで覚えていただいて、練習問題で本試験に対応出来るようにしましょう。

材料費って何だ?って言われると実は説明に苦しむのですが、指導者になる訳でもないなら、深く考えずに製品を作る上で主な素材なんやろなー程度で自分に酔いしれるくらいじゃないと工業簿記・原価計算の勉強は続けていけません。工業簿記をマスターするコツはあまり深く考えないこと。工業簿記って暗いイメージあるでしょ?まるで地下ダンジョンを探検しているようなイメージ。なんか奥に怪しい抜け穴があるぞって思っても首突っ込んじゃダメです。特に2級合格を最重要課題としている皆様は、そんなところに首を突っ込まなくても全然合格は出来るので無視することが大切です。

それでは具体的に必要最小限の重要論点のみ学びましょう。

材料費には直接材料費間接材料費とに分かれます。

直接材料費はイメージ出来ると思いますが、製品を作るのに主要な材料・・・そのまんまです。材料と言うよりは素材と言った方がイメージ出来ると思います。車作るなら鉄とか家具を作るなら木材とかそんなイメージでオッケー。その他に外部から調達する買入部品ってのもあります。例えば車ならハイブリッドシステムとかエアバッグとかですね。全部が全部自社で製造していないケースもあるのです。これも主要な材料ですよ。

間接材料費直接材料費以外で覚えてよいでしょう。簿記検定では直接材料費については、「主要材料費」「買入部品費」と明確なキーワードで書かれているのでまず間違いません。だからその2つだけ直接材料費として覚えていただいて、その他は間接材料費として試験では対応する方が賢いです。あえてイメージするのなら塗料や接着剤などの補助材料、ネジや機械油、作業着などの消耗品とかが該当します。

-どうして直接材料費と間接材料費に分ける必要があるの?

よい質問です。実は直接材料費と間接材料費とでは取扱いが違います。

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直接材料費は仕掛品勘定に直接賦課されますし、間接材料費は製造間接費勘定を経由して最終的に各製品に配賦されます。

-あれれ?間接材料費も最終的には仕掛品勘定に配賦されるんだろ?最初から仕掛品勘定でよくね?

あのね、仕掛品を製品名に書き直してイメージしてごらん。企業は常識的に考えて色々な製品を作っているだろ?だから本当は沢山の種類の仕掛品勘定が存在すると思っていいよ。ネジとかドライバーのような間接材料費は、通常は色々な製品の製造に共通して使っているものなんだ。だから製造間接費から沢山の仕掛品勘定に配分するようなイメージで覚えてね。

次に予定単価で材料費の計算をする場合をおさらいしよう。最重要論点の一つになります。

材料の払い出し計算で、先入先出法とか平均法とかその都度やってたら面倒臭いよね。一昨日は50kg出庫して昨日は80kg出庫して今日は70kg出庫して・・・いちいち計算してられるか!!それなら最初からまとめて持って行けよ!!って倉庫係だったら切れそうです(笑)

そこでとりあえず出庫単価を適当に決めます。適当って言っちゃダメだな、大体経験則からこんなもんだろうっていう予想単価を決めるんですよね。それを予定単価と呼んでいます。下記の図でイメージしましょう。

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これだと、50kgとか80kgとか70kgとかチマチマ材料を出しに来ても計算は楽チンですよね。
だって出庫量にとりあえず@110円を掛ければいいだけですから。
この材料勘定は材料倉庫とイメージして下さい。材料を買ってきたら左側(実際額)、出庫したら右側(予定額)です。これのメリットは計算が早くなる、つまり原価計算が早く算出されるのです。特に総平均法なんてやり方で管理してたら月末にならないと正確な単価が出せないでしょ?月末まで投入された材料の金額が分からないって・・・仮にあなたのお給料が月末まで判明しないって会社に言われたらブチ切れません?

-あれ?上記では仕掛品、つまり直接材料費のことだと思うのだけど間接材料費は予定価格で計算しないの?

どうだろうね?もちろん間接材料費を予定単価で計算してもおかしくないけど、問題としてあまり見掛けた事が無いから無視でいいんじゃないかな?理屈は同じだから例え出題されても慌てずに対処しましょうね。

-そんな適当でいいの?

いいんです(笑)そもそもネジとか軍手とか消耗品をいちいち先入先出法とかで管理すると思うかい?気が狂うぞ普通。そりゃ月末には在庫は数えるだろうよ。使ってない物は原価にならないからね。でもそれら間接材料費の減耗とか真剣に把握しようと思うと大変だぞ。それなりの人手だって必要だろうし、人件費が嵩んで逆に原価を上げる要因になりかねない。だからザックリでいいんだよ。


はい、論破論破・・・(やれやれ)
それじゃ、次に実際に見積りの予定価格と誤差が生じた場合はどうなるのかみていきましょう。

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月末に先入先出法を前提に実際消費額を計算してみましょう。
@100×100kg+@120×300kg=¥46,000

この計算は大丈夫でしょうか?しかし、帳簿上は仕掛品勘定に先に予定価格で¥44,000を振り替えていますので借方残高は¥26,000になっているはずです。本来(実際額でチマチマ計算した場合)は¥46,000で振り替えて借方残高は¥24,000になっているハズです。しかし、実際(というより帳簿上ですね)倉庫には¥24,000の在庫しか残っていない計算になりますから¥24,000に合わせないといけません。

(材料消費価格差異)2,000    (材  料)2,000

そこでこのような仕訳をします。現状では材料が¥2,000多く在庫として残っていました。言い換えると仕掛品勘定に振り替え不足が生じていた訳です。予定価格で計算した金額が甘かったのでしょう。
材料費は仕掛品を通じて製造原価になるのは分かりますよね?結局予定で計算した製造原価が2,000円少なく見積もっていたわけです。工場の懸命の努力で、10万円切りの99,000円で作れたと思ってた製品が、実は101,000円掛かってたみたいな(笑)

Ⅰ売上高                        150,000

Ⅱ売上原価

  1.月初製品棚卸高            0
  2.当月製品製造原価      99,000
    材料消費価格差異     2,000 
                   ------
                                               101,000
  3.月末製品棚卸高            0   101,000 
                   ------     

Ⅲ販売費一般管理費                 15,000

まあ、イメージ的にはこんな感じで最終的に当月製造原価を調整するよ。ちなみに予定価格で計算した材料費44,000円は上記の99,000円の中に含まれているハズだ。
予定したよりも多くコストが掛かっているから不利差異って言うんだ。借方差異とも言うね。よく上記の損益計算書を作る時に足すのか引くのか悩む方がいるけど、理解していれば感覚的に分かるよね。思ったよりも多くコストが掛かれば原価が増えるから・・・つまり最終利益が減るわけでしょ?不利差異ってのは利益を減らすからマイナスイメージって感じで覚えてね。

表記も、▲2,000とか-2,000とかで表現するよ。

それではまとめてみようか。

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材料費を@110として予定価格で計算していた場合の材料勘定だよ。この誤差はあくまで価格の誤差だって事を強調しておくよ。数量面は実際の出庫数量で管理しているから誤差は生じないのですよ。左右ともに合計は600kgでしょ?それじゃ何がズレているのかっていうと予定単価と実際単価の誤差に実際出庫量を乗じた金額がズレているんだね。上図の価格差異は、本来(実際にチマチマ計算していた場合)だと仕掛品勘定に振り替えられていたハズなんだ。つまり製品原価になっていたということ。だから最終的に原価にしないといけない。

-それなら材料消費価格差異じゃなくて仕掛品勘定に後から振り替えればよくね?

それでもいいけど、結局月末まで仕掛品勘定が締められない訳だろ?それなら実際原価で最初からやっても同じ事になる。つまり、予定単価を使う意味がないんだよね。だからあくまでも微修正の意味で損益計算書に加減する方が良いんじゃないかな。工場はあくまで99,000円で製品を作ったんだ。たまたま材料が高騰したからってお前達は努力が足りないって言われたらやる気なくすよね。そんなイメージで覚えればいいよ。

-それ本当なの?(笑)

あのな、最初に言ったけど深く首を突っ込んじゃダメなんだ。それじゃ一歩も先に進まない。工業簿記・原価計算は屁理屈でもなんでもいいので、どこかで自分を納得させて無理矢理にでも先に進むことが大事なんだ。専門学校ではもちろんこんなこと教えないよ。でもな、経験則からこれは間違いない事実。信じるものは救われるんだぞ(笑)

最後に研究課題。もし、予定していた価格よりも実際には低い価格で材料を消費していた場合はどうなりますか?
これは不利差異の反対、つまり有利差異(貸方差異)になるよ。実際の価格以上に製造原価に振り替えていたんだからどういう処理をするか想像して考えてみてね。

それでは次の論点である材料の棚卸減耗費を調べてみようか。

棚卸減耗費は月末に実際に帳簿上にあるはずの数量が足りない場合を言うんだ。これは予定単価で計算しようが実際単価で計算していようが価格面のお話ではないことは理解出来るよね。月初に100kgあって、仕入れが500kgあったとする。倉庫からの出庫は実数で管理しているので、400kgを月中に出庫していたら月末には200kg残っていないといけないわけだ。それが190kgしか残って無かったら・・・あれ?ってならないか。

素材が食べ物だったら倉庫係が怪しい・・・あいつ食ったんじゃねーかみたいな。特に管理人はやしに食べ物を扱わせるのは止めておけってのはセオリーらしい。いや、そんな事は置いといてだな、何らかの事情で材料が帳簿上残っていない場合はあるんだ。こんな場合の処理をどうするか。材料勘定は残高24,000円で締めようと思ってたら問題発生。やれやれだな。

(製造間接費) 1,200   (材  料)1,200

結論から言うとこの消えた材料は製造間接費として処理する。先入先出法を採用しているのなら@120円に消えた10kgを乗じて¥1,200になるのは大丈夫かな?製造間接費に振り替えるってことは、最終的には仕掛品勘定に振り替えて製品原価を構成することになる。ただ、あくまでも通常発生すると見込まれるものだけなんだ。

 

-棚卸減耗費は予定単価で計算しないのですか?

減耗は月末に棚卸をして把握するものだから予定単価を使う意味がないよ。だって月末になれば材料の払出単価はほぼ確定している訳だからね。

 

-あれれ?月末に把握する棚卸減耗損を製造間接費にするんだよね?つまり仕掛品に結局振り替えるってことは・・・月末まで仕掛品勘定が締まらないから原価計算が遅れて意味なくね?

まあ、普通は製造間接費も予定配賦しているよね(笑)

-結局400kgで製品を作るはずだった直接材料費は410kgで作った計算になるんだよね?それなら製造間接費じゃなくて仕掛品に振り替えた方がいいんじゃね?

何度も言うけど仕掛品勘定はさっさと締めて当月製品製造原価は確定したいんだよね。そうじゃないと予定計算する意味がないんだよ。だから最終的には材料消費価格差異や賃率差異、そして製造間接費配賦差異は売上原価を直接調整するんだよ。

ここで材料棚卸減耗費についてまとめるよ。

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まず月末材料は実際有り高の190kgで計算して繰り越さないといけないこと。その為に差額の10kg分を減耗費として製造間接費に振り替えます。右、左ともに600kgですよね!

さあ、いよいよ最後の論点。材料副費について調べてみよう。
材料副費には外部副費と内部副費があるんだけど違いは分かるかな?

材料外部副費 ・・・ 引取運賃や買入手数料が該当します。

材料内部副費 ・・・ 保管費など倉庫での管理費用

材料内部副費は出題実績が極めて少ない(っていうか第98回以外で見た記憶無い)ので無視してもいいけど、決して難しくないし出題されたらパニックになるのでサラッと流して聞いて欲しい。このような材料副費は付随費用と呼ばれているんだけど、材料の購入代価に付随費用を加算した金額を材料の仕入原価として処理するのが通常なんだ。ちなみに材料外部副費は倉庫の納品するまでの費用、材料内部副費は倉庫内で発生する費用とイメージしよう!!

(例題)材料500kgを@115円で掛け購入し、引取運賃2,500円は現金で支払った。

(解答)

    (材  料) 60,000    (買掛金) 57,500
                  (現  金)  2,500

これが解答になります。
500kg×@115+2,500=60,000ですよね。

ただ、管理費などの内部副費は購入時点では金額が判明しないのが通常です。これらを材料費に含める場合は予定計算することがあります。

(例題)材料500kgを@115円で掛け購入し、購入代価に5%の材料副費を予定配賦して計算している。

(解答)

   (材   料) 60,375     (買掛金) 57,500
                   (材料副費) 2,875

いかがでしょうか。また、予定配賦かよ!!怒りの声が聞こえてきそうですね(笑)
材料副費とか見慣れない勘定が出てきましたが今のうちに慣れておきましょう。試験でいきなりこんな勘定科目が出てきたら頭が真っ白になりますよ。でも何ら難しくないでしょ?

(例題)月中に材料に関する引取運賃、管理費が¥3,000発生し小切手で支払った。

(解答)

   (材料副費) 3,000    (当座預金) 3,000

この仕訳は大丈夫でしょうか。
実際には予定配賦額と実際発生額とで差額が生じますので、材料副費配賦差異に振り替えます。

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結局色々な勘定科目が出てくるけど、予定配賦は処理自体は同じ事をやっているんだよね。
つまり、価格を予定単価で計算していること。そして実際額との差額は最終的に売上原価で調整すること。このルールはしっかり守れば大して怯える必要もないんじゃないかな。これから練習問題を解いてもらうけど、少々発展形になっても対応出来るようマスターして欲しい。

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いかがかな?いきなり最初の問題から戸惑ったのではないでしょうか(笑)
実はここまで触れてなかった重要論点なんだけど、主要材料を無償支給して加工を依頼する場合の加工賃は直接経費になります。これは材料費の論点というよりは経費の論点なんだけど、1と2はセットで覚えるといいね。ホントよく出てくる項目なんだ。散々学んだとは思うけどね。

-3の材料副費の問題が難しかったな。

これは材料副費のフルパターンと思って覚えておくといいよ。実際に第98回ではこのパターンで出題されている。これは知っていなくても解けそうな気もするけど、知っていれば大きなアドバンテージになるね。イメージ的には予定配賦額で計算するのは内部副費じゃないかと思う。外部副費は倉庫に納品するまでの付随費用だからそんなにタイムラグは無いしね。

これだけやっとけば材料費は鉄板だろう。本当に頑張ってくれ!!
例え予想が外れてもいいじゃないか。覚えた知識はいずれは開花して報われると思うよ。予想が外れたからって嫌がらせの書き込みとか投稿するのは止めましょうね(;´Д`)

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