■ 売掛金(未収金)と買掛金(未払金) ■

【Homeに戻る】 【新・簿記講座目次】 【手形取引(二)に戻る】 【次に進む】

■ 売掛金と未収金 ■

 それでは、続いて掛取引について学んでいくことにしましょう。企業が行う商取引には様々な取引があり、また、取引決済も色々な方法が存在します。例えば商品を購入して他の企業や消費者に販売する取引や、使わなくなった会社の備品や車両などを譲渡することもあるかと思います。また、その販売対価としては現金取引だけではなく、小切手や受取手形、そして掛取引があります。

 今回はその掛取引について見ていく事にします。

 掛取引って何でしょうか?これは商品等を販売したり購入したりした際に、将来の決められた期日に支払いを行う事を、お互いの合意の下で行う取引をいいます。信用取引とも呼ばれています。

 例題1)当社はA社に商品を10万円売上げ、その代金は来月受け取ることにした。

 いかがでしょうか?三分法を前提とした場合には、商品を売り上げたので貸方に売上勘定(収益)10万円になる事は分かりますね。それでは借方はどうなるのでしょうか?この場合は将来10万円受け取ることが確定している売掛債権(資産)が発生します。その売掛債権を売掛金(うりかけきん)という勘定で処理します。売掛金は資産の増加項目なので、借方に売掛金10万円となるわけです。

 (売掛金)100,000 (売 上)100,000

 それでは、次にもう1問例題を解いてみてください。

 例題2)B社に営業車両(帳簿価額10万円)を10万円で譲渡し、その代金は来月受け取ることにした。

 いかがでしょうか?これも先程と同じく掛取引だという事に気が付いたでしょうか?但し、この場合の仕訳は少し勘定科目が変わるのですが、基本的な考え方は全く同じです。実は簿記上、通常の営業活動である商品売買と、それが主力ではない有価証券・固定資産等の売買とは少し表現を変えています。とりあえず解答を見てください。

 (未収金)100,000 (車 両)100,000

 まず、借方を見てください。売掛金勘定ではなく未収金勘定を使用しています。未収金(みしゅうきん)も売掛金と同じく、信用取引から生じる掛債権(資産)なのですが、どうして売掛金を使わないのでしょうか?それは、売掛金は主たる営業活動である商品売買の掛取引に対して使用するもので、固定資産等の掛取引は売掛金勘定ではなく未収金勘定を使用する決まりになっています。

 もう一つの注意点は分記法で処理していることです。商品売買のように三分法でも処理することは可能ですが、固定資産や有価証券等の売買は恒常的に行われるものでもなく、分記法で仕訳を行うのが普通です。ですから上記例題2の営業車両の帳簿価額が5万円なら当然下記のような仕訳になります。

 (未収金)100,000 (車   両)50,000
               (車両売却益)50,000


■ 買掛金と未払金 ■

 それでは、続いて買掛金と未払金について学習していきます。これは先程学習しました売掛金と未収金と考え方は全く同じです。つまり売掛金と未収金は販売・譲渡した側で使用する勘定ですが、買掛金と未払金は購入・譲り受けした側で使用する勘定なのです。早速例題で確認してみましょう。

 例題1)当社はB社から商品を10万円仕入れ、その代金は来月支払うことにした。

 いかがですか?代金の支払いは来月なので信用取引、つまり掛取引ですよね。三分法を前提とした場合には、商品を仕入れたので借方に仕入勘定(費用)10万円になる事はもうお分かりになると思います。そして貸方ですが、将来10万円をB社に支払わなければならない義務を負いますから、負債項目であります買掛金(かいかけきん)という勘定を使用します。この例題では買掛金の増加なので負債の増加になります。つまり貸方に仕訳をする事になります。

 (仕 入)100,000 (買掛金)100,000

 それでは続けて例題を解いてみてください。

 例題2)当社は倉敷商会から土地を100万円で購入し、その代金は来月支払うことにした。

 いかがでしょうか?これも信用取引になる事はお分かりですね。但し、この場合は商品売買ではなく固定資産を購入しています。ですから借方(仕入)100万円とすると間違いです。また、貸方も(買掛金)100万円とするのは、今までの流れからすると間違っている事に気づいたのではないかと思います。そうです!買掛金勘定は、主たる営業取引である商品売買の信用取引によって、仕入れた商品に対してのみ使用する勘定だからです。この場合は買掛金に代わって未払金(みばらいきん)という勘定を使用します。それでは、解答です。

 (土 地)1,000,000 (未払金)1,000,000

 借方は資産である土地の増加で貸方は負債である未払金が増加しています。掛取引の基本的な流れは以上の通りですが、ポイントは商品売買取引なのかそれ以外の取引なのかで勘定科目が相違する事を押さえてください。

■ 掛取引の相関関係■


掛取引の全体図


 最後になりますが、今までの説明をイラストにしてみました。掛取引においては、主たる営業活動である商品売買取引と、固定資産などのその他取引では使用される勘定が異なることがこのイラストから把握して頂けると思います。また、A社の売掛金とB社の買掛金、及び、A社の未収金とB社の未払金の金額は必ず一致します。これらは表裏一体で切っても切り離せない関係になっています。つまり、この世に存在する全ての売掛金(未収金)と買掛金(未払い金)は必ず一致している事になるのです。


【Homeに戻る】 【新・簿記講座目次】 【TOPに戻る】 【手形取引(二)に戻る】 【次に進む】


目指せ!簿記検定・税理士試験
http://www.mezase-bokizeirishi.jp/