簿記上の取引
皆さん、こんにちは。この一週間しっかりついてこれましたか?これまでで大きな柱となる部分の学習は終わりました。簿記の目的は何だったのか・・・もうイメージは出来たと思います。それではもう少し細かい内容を学習していくことにしましょう。今回は
取引(とりひき)について学びます。取引にも色々あるのですが、簿記上の取引を学びます。一番最初の
1-3お金はいつ計算するの?で財布からお金を出したり入れたりした時に財布の中身を数えましょうと言ったのを覚えてますか?イメージ的に言えばこれが簿記の取引になります。つまり、会社の財布である正味財産、言い換えると
資産・負債・資本が増減変化するような行為を簿記上の取引と呼んでいます。
取引=資産・負債・資本が増減する
細かい内容は後のお楽しみにして、ここでは世間一般の取引と簿記上の取引の違いをサラッと理解してくれればそれでOKです。一番良く例えられるのが、商品売買契約など何らかの契約を交わすことです。これは世間一般では取引と呼ばれていますが、簿記上の取引には該当しません。何故なら契約書を交わした時点では、資産や負債・資本が増えたり減ったりしてないからです。今後、その商品を販売して現金を受け取ったとか、売掛や手形を受け取った場合の債権が発生するとか(資産の増加)、又は、その契約により商品を仕入れた時に現金で支払ったとか、買掛や手形で支払った場合の債務が発生する(負債の増加)とかしないと取引としては認識しないのです。また、火災で倉庫や商品が燃えた場合は通常は取引とは呼びませんが、簿記上では「商品」や「建物」という資産が消滅(資産の減少)してますので取引に該当します。
帳簿と記録
簿記上の取引が何となく理解出来たあなたは、その取引を把握して記録する必要があります。儲けの金額は期首と期末の純資産の差額で判明するのですが、その内訳を知りたい時に過去の取引が分からないとどうしようもないのです。結果だけ分かればいいって訳ではないのが簿記の特徴でもあります。つまり、いつ・どこで・誰が・何のために・・・みたいに会社の資産・負債・資本に増減変化(簿記上の取引)があった時点で、細かく記録する必要があるのです。その記録する道具を帳簿と呼び、取引を記録することを帳簿に記入すると呼んだりします。
取引を帳簿に記入して記録を残すのは、忘れないようにするためなんです。おこづかい帳も家計簿も同じように記録してますよね。これは後になって何を買って財布の中身が減ったのか、いつ収入があって財布の中身が増えたのかを見直すことが出来るからです。記録することは人類の偉大な発明のひとつと言えますね。
仕訳とは何だろう
ここでは仕訳(しわけ)と呼ばれるものをマスターしましょう。また新しい用語が登場して頭の中がパニックになっているのではないでしょうか。決して無理はしないでマイペースで学習をしてください。さて、仕訳とは簡単に説明すると取引を一定のルールに従って簡単に略したものです。野球のスコアブックを知ってますか?三振しただの、ホームランを打っただの、エラーをしでかしただの、試合中には色々な出来事が起こりますが、マークみたいな記入方法で簡略しています。イメージ的には野球も簿記も同様です。取引の内容を細かく把握して記録したいのは山々ですが、例えば「4月1日午後4時に○○新聞のおばちゃんが本社に3,000円の集金にやってきたので、対応した経理課の○○さんが経理課長の決裁を貰って金庫の中から3,000円取り出し、領収書を貰って支払った・・・」みたいに細かく帳簿に記録出来ればいいのですが、ここまで細かくズラズラ書かれると見にくいですし、書くほうも腱鞘炎になっちゃいます(笑)それに暇な会社はいいですけど、日々タイムリーに取引がある会社ではあまりにも非効率でしょう。そこで発明されたのが、仕訳なのです!
仕訳のルールを学ぶ前に仕訳が必要とされる取引を確認します。資産・負債・資本が増加、又は、減少するのを簿記上の取引を言いますから、
第4章貸借対照表の項目で学んだ
資産・負債・資本が増減する取引は全て仕訳の対象になるんです。その関係を表した図を下記に掲載しますが、無理して覚える必要は全くありません。この図はこれから簿記の学習を進めていくうちに勝手に体に染み付いていきますから(笑)
仕訳のルール
それでは仕訳の具体的なルールを見ていくことにしましょう。以前
3-3複式簿記と単式簿記の違いで、軽く複式簿記のお話をさせていただきましたが覚えていますか?もう一度読み返して欲しいのですが、会社の取引は複式簿記が前提です。つまり
会社の資産・負債・資本が増減する原因と結果の二つの側面から把握して、同様に記録を行います。たとえば魚を200円でおばちゃんに売ったとします。200円を受け取った時点で現金(資産)が200円増加しますので、簿記上の取引に該当します。しかし、200円の現金が増えたのには原因があります。勝手に増えるわけありませんよね。そうです、魚を200円で売ったからですよね!つまり売上という収益が200円増加しているんです。
仕訳も同様に原因と結果の二つを表現して記録する必要があります。そこで下図を見てください。
これが仕訳の基本的な書き方になります。左右に同じ金額が並んでいますが、
左側を借方(かりかた)、そして
右側を貸方(かしかた)と呼んでいます。上の図の仕訳は、現金である資産が200円増加して、売上である収益が200円増加している取引を表しています。まださっぱり分かりませんよね(さっぱりし過ぎ?)。さて、以前
第4章貸借対照表と
第5章損益計算書の所で黒板に書かれていたT字の図を覚えていますか?まずはあれを思い出して欲しいのですが、例えば資産は貸借対照表と書かれたT字図の左側(つまり借方)に書いてありました。負債と資本は逆の右側(つまり貸方)でしたね。損益計算書では、費用が左側で収益が右側でした。右・左に深い理由は無いのですが、ここでは何となくでいいので覚えてください。つまり
資産と費用は左側の項目、負債・資本と収益は右側の項目だと理解して下さい。仕訳もその前提で行います。
仕訳の練習問題
仕訳は習うより慣れろで、どんどん経験を積んだ方が身につきます。分からないなりにも練習問題と答えを見てイメージして見てください。Q1は現金という資産が減って、当座預金という資産が増えた取引。Q2は借入金という負債が増えて、現金という資産が増えた取引。Q3は通信費という費用が発生して、現金という資産が減った取引。Q4は200円の売上という収益が実現して、売掛金という資産が増えた取引です。どうですか?どの取引も原因と結果の二つの側面から増減変化しているのが理解出来ますか?これらを仕訳という形で表現してみましょう。答えが分かる人はいないと思いますので、とりあえず答えを見てみましょうか。
Q1の当座預金と現金はともに資産です。貸借対照表では資産は左側、つまり借方になっていましたね。なので、仕訳で右側に資産である現金がいると混乱しそうですが、これは現金が減少したことを表します。慣れるまでかなり大変だと思います。しかし、基準となる借方・貸方を把握していれば、それほど難しくはありません。細かい科目はともかく、資産・負債・資本・収益・費用の5つの基準となる借方、貸方を覚えておけば対処は可能なはずです。Q2の取引は借方に資産、貸方に負債が仕訳されています。資産は借方項目、負債は貸方項目ですから仕訳ではともに増加している取引になるのです。Q3は費用が発生している反面、資産が減少している取引を表します。資産も費用もともに借方項目でしたね。なので仕訳上、貸方にある場合は減少を表します。Q4は資産は借方項目で、収益は貸方項目ですから仕訳上はともに増加を表しています。
最後にもう一問仕訳をチャレンジしてみましょう。と言っても答えも一緒に掲載してますからあまり意味が無いかもしれませんが・・・(笑)実はこのQ5は先程のQ2と全く逆の取引になります。Q2はお金を借りた取引で、このQ5はお金を返した取引です。答えの仕訳も左右全く逆になりますが、どうしてこうなるか理解できますか?何となくで結構です。大体イメージ出来ればOKです!資産である現金は、左側が基準。負債である借入金は右側でしたね。なのでQ2の仕訳は共に増加しているし、Q5は共に基準とは逆になってますので減少していることになるのです。今の段階では何となく理解出来れば先に進んでいいでしょう。