勘定の締め切り
皆様、こんにちは。とうとうここまでやってきました。ここまでお付き合いしていただいて本当に感謝しています。さあ後一息です!ラストスパート!一緒に頑張っていきましょう。今回は帳簿の締め切りを見ていきます。帳簿も色々あるのですが、主に総勘定元帳の締め切りについて学んで行くことにしましょう。
10-3決算振替と帳簿の締め切りでも軽く触れましたが、
決算整理の後で各費用・収益勘定は集合勘定である損益勘定に振り替えるのでした。残高を振り替えるわけですから振替後は、元の費用・収益勘定は貸借が一致しています。下図を参照して下さい。
上図は費用勘定である通信費勘定を、集合勘定である損益勘定に振り替えた後の状態です。振替によって貸借の金額が一致して二重線を引いて勘定科目を締め切ります。同様に収益勘定である売上勘定も下図に示しておきます。
売上勘定は決算整理後(決算修正後)の勘定残高は、貸方残になってます。これを全額損益勘定に振り替えることにより、貸借一致させて勘定を締め切ります。この場合、借方側で空白が出来ますが斜線を引いて後から加筆出来ないようにするのが一般的です。それでは次は損益勘定の締め切りを見ていきましょう。下図を参照して下さい。
損益勘定の締め切りになります。分かりやすいように
10-3決算振替と帳簿の締め切りの図解と同じ色分けで表してます。緑色の部分は収益勘定の残高を振り替えたもの。ピンク色の部分は費用勘定を振り替えたものです。損益勘定の振替は決算整理後残高試算表を元に振り返るので、日付は全て決算日になります。青色の部分が差額の当期純利益になりますが、
これは資本金勘定に振り替えるので相手勘定科目である資本金になるのです(間違っても当期純利益とは書かないで下さい)。最後に以前にも書きましたが、損益勘定の
相手科目に諸口は使いませんので再度ご確認下さい。
英米式決算法
さて、収益や費用の勘定は締め切りました。また、集合勘定である損益勘定もこれで締め切ることができました。次はいよいよ貸借対照表項目である、資産・負債・資本の各勘定を締め切ります。これらは以前にもスポーツ選手に例えて書きましたが、収益や費用と違って残高試算表の各残高は翌期に繰り越されます。つまり企業体力に値する数値は決算によってリセットされることはありません。そこで帳簿上、その繰り越しの方法がいくつかあるのです。まずは英米式決算法(えいべいしきけっさんほう)について見ていくことにしましょう。
上図は資産である現金勘定を示しています。決算整理後の残高は借方残高527,000ですが、英米式決算法ではそのまま次期繰越と記入して、貸借を一致させて締め切ると同時に、翌期の欄に前期繰越として記入しちゃいます。
資本金勘定の場合も同様です。貸借が逆になっていますが、先程の現金と繰越の考え方や方法は同じです。ただ、資本金の場合は損益振替仕訳後の資本金、つまり期末資本金残高を翌期に繰り越します。繰越処理自体は仕訳帳を通さないでダイレクトに行います。つまり勘定の締め切りと同時に翌期の記入もされることになります。英米式では必ずこれを同時に記入しますので覚えておくといいでしょう。
準大陸式決算法
それでは次は準大陸式決算法(じゅんたいりくしきけっさんほう)について見ていくことにしましょう。英米式はどちらかというと資産・負債・資本の簡便な繰越処理方法といった感じなのですが、大陸式は少しきっちりしてます。と言ってもそんなに難しく考えないで下さい(笑)。要するに記録のルールである仕訳帳から総勘定元帳への記入の流れが例外なくきっちりしているのです。つまり総勘定元帳に記入している金額は必ず仕訳帳から通っている理屈です。大陸式決算法には純大陸式と準大陸式の同じ名前の方法があります。この辺は慣れないと混乱するかもしれませんが、図解を見ながらある程度の理解が出来れば上出来だと思います。
実は大陸式決算法は損益勘定のような集合勘定を設けて、ここに各資産・負債、そして資本金を振り替えます。準大陸式では残高勘定(ざんだかかんじょう)という勘定に振り替えます。振り替えることによって各資産・負債・資本金勘定の貸借が一致して、帳簿を締め切ることが可能になります。そして振り替えた残高勘定の貸借は必ず一致します。損益勘定は差額が出ましたけど、残高勘定ではどうして差額が出ないのでしょうか。これは、損益振替仕訳によって当期純利益が資本金に振り替えられた期末資本金の金額を残高勘定に振り替えているからです。つまり本来差額が出るはずの水色の部分が既に資本金に組み込まれているからです。
こちらが準大陸式における残高勘定の内容になります。こちらもイメージしやすいように上図、及び、
10-3決算振替と帳簿の締め切りで見ました図解と同じ色分けで表示していますのでご確認下さい。
この振替仕訳を行うことにより、資産・負債・資本の各勘定は貸借が一致して帳簿を締め切ることになります。なお、この振替仕訳は英米式決算法では行いません(仕訳帳に記入しない)ので、仕訳帳を締め切るときの貸方・借方の合計金額はその分だけ大陸式決算法の方が大きくなります。マニアな内容ですから当然参考程度で構いませんよ。
準大陸式決算法で資産勘定である現金と資本金勘定を締め切った図です。先程の英米式と比較してみて下さい。英米式では次期繰越としていたのを、集合勘定である残高勘定に振り替えています。また、英米式では同時記入していた次期繰越もありません。
準大陸式決算法
最後に純大陸式決算法(じゅんたいりくしきけっさんほう)について見ていきましょう。今回の内容はボリュームがあるので、さすがに少し疲れたかと思います。しかし最後になりましたので、あと少しだけお付き合い下さい。純大陸式の純は純粋な純ですから、大陸式の中でも厳格な方法なのかなって思われると思います。実際、まあそうなのですが(笑)、個人的にはあまり重要視しなくてもいいんじゃないかと思います。締め切りも準大陸式と大きく変わらず、集合勘定が残高勘定ではなく閉鎖残高(へいさざんだか)勘定、又は、決算残高(けっさんざんだか)勘定という勘定を用いるだけで、それ以外は準大陸式と変わりはありません。
なんだそれは?!集合勘定の名前が違うだけかよ!と思われるでしょうが、純大陸式と準大陸式の大きな違いはむしろ翌期首の開始記入の時にあると言ってもいいかと思います。この辺は次回の講義で学びましょう。ちなみに大陸式決算法の大陸とはヨーロッパ大陸を指すような事を聞いたことがありますが、詳しくは知りません。それは雑学の分類になりますので、知らなくても全然問題ないかと思います(多分)。