帳簿の開始記入

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帳簿の開始記入

勘定の締め切り

皆様、こんにちは。いよいよラスト講義です。最後ですが、簿記初学者の方はここは無理しないで流す程度でいいと思います。内容は大切ですが、もう少し簿記の学習が進んだときにもう一度見直して下さい。逆にちょっと簿記に自信があるぞって方は意外と知らないと思われることも書いてますから見直してもいいでしょう。今回はややマニアックな項目である開始記入の方法について見ていきましょう。
最後の講義で開始記入
まず分かりやすいように今回は簡単な数字を前提に、英米式決算法と大陸式決算法の開始記入の方法について学んでいくことにしましょう。下図のように前期から繰り越されてきた資産・負債・資本の金額は、現金500、売掛金100、繰越商品100、買掛金200、未払金50、資本金450としますね。
前期末貸借対照表

英米式決算法の開始記入

それでは最初に英米式決算法の開始記入について見ていきましょう。前回の学習でも学びましたが、英米式は期末の資産・負債・資本の各勘定残高を次期繰越として、同時に翌期首に前期繰越として同じ金額を同時記入しました(12-2英米式決算法)。覚えていますでしょうか。つまり前期の期末に期首の勘定残高を記入したことにより、期首の時点では既に各勘定の残高が反映されているので、開始記入も何もなく、わざわざ仕訳を起こさなくてもそのままの状態でいいことになります。
英米式決算法の期首勘定科目状況
これが英米式が簡略式と呼ばれたりするゆえんですが、実はこのままだと非常にまずいことになるのです。何がまずいのか?以前、9-2合計試算表を学んだときに総勘定元帳の貸借合計と仕訳帳の貸借合計が一致する事により、仕訳帳から総勘定元帳が正しく転記されている事を検証出来ましたね。そう、期首に何もしないでこのままだと、各勘定には残高が埋められているのに仕訳帳は真っさら(残高ゼロ)の状態で期中の取引を開始すると、どこかで合計試算表を作成した時に仕訳帳と総勘定元帳の合計が一致するわけありません。
英米式決算法と合計試算表の関係
上図は期中に全く取引が無かったと仮定して合計試算表を作成してみた場合です。仕訳帳は基本的に期首から白紙のままの状態なので、借方も貸方も残高は存在しません。しかし、合計試算表の借方・貸方合計金額は共に700円ですよね。つまり仕訳帳から総勘定元帳へ正しく転記出来たのかどうか検証が出来ません。これを解消するために行うのが開始記入です。
英米式決算法の仕訳帳への開始記入
そこで、強引に数字を合わせるために、上図のような開始記入を行います。総勘定元帳は既に記入済みなので転記は不要です。つまり本来の流れですと仕訳帳から総勘定元帳へ転記する流れなのですが、この開始記入については総勘定元帳に合わせるために無理やり仕訳帳を合わせたイメージになります。セオリーから考えると結構強引のような気もしますが、この一行を挿入するだけで全てが上手くいきます。

準大陸式決算法の開始記入

それでは次は準大陸式決算法の開始記入について見ていきます。前回のおさらいですが、準大陸式では英米式のように翌期の繰越記入というのは行われていませんでした。つまり期首においては、仕訳帳も総勘定元帳も白紙の状態です。ただし、前期末の資産・負債・資本といった項目(企業体力)は引き継いでいきますので、期首において何らかの処理が必要になります。つまりこのまま何もしないで期中取引を始めると英米式より悲惨な状態になるのが何となくおわかりでしょうか(笑)。
準大陸式決算法の開始仕訳
それを避けるために上図のような開始仕訳を期首に行います。これを仕訳帳に記入して総勘定元帳に転記すると、引き継いだ残高も反映されますし、仕訳帳から総勘定元帳への記入のルールが守られていますから各種試算表を作成したときの検証性もバッチリですね!さあ、それでは勘定の転記はどのように行うかお分かりでしょうか。以前に学んだ8-4特殊な仕訳の転記方法を参考にして少し考えてみてください。相手勘定科目が複数ある場合の転記方法ですよ。
準大陸式決算法の開始仕訳の転記
例えば現金勘定の転記を考えてみましょう。借方500円が現金勘定の借方に記入されます。その時の相手勘定は複数にまたがっていますので、通常は諸口と記入します。これが正解のはずです。しかし、何故か準大陸式決算法の開始仕訳の相手勘定は諸口を使用しないで、前期繰越とする場合が標準のようです。どうしてわざわざそんなことをするのでしょうか。
準大陸式では諸口を開始仕訳で使わない
実は諸口を使うと、例えば期首と同じ日に8-4特殊な仕訳の転記方法のような相手科目が複数になる取引を行った場合に、期首日付で諸口が並んでやや見にくくなりますよね。なので便宜上開始仕訳の相手勘定科目に諸口を使わないんじゃないかと言われています。また、結果的に勘定記入上は英米式決算法と全く同じになりますが、ここまで読んでいただければ全然意味合い違うのはお分かりですよね。
準大陸式で諸口を使わない理由

純大陸式決算法の開始記入

最後に純大陸式決算法の開始記入を見ていきましょう。純大陸式の場合も翌期の繰越記入は行っていませんので、準大陸式同様に期首に何らかの処理が必要になります。そこで考え出されたのが開始残高勘定を使用した開始仕訳を行うことです。つまり準大陸式と決定的に違うのは新しい勘定科目が増えています。下記の仕訳を参照して下さい。
純大陸式決算法の開始記入
このように開始残高勘定と呼ばれる勘定が増えるのが純大陸式決算法の特徴になります。この開始残高勘定の記入も何故か諸口は使いません。こちらは期首に記入すればその使命を全うし、期中は全く使わないので諸口を使ってもいいような気もしますがあまり深く考えないでおきましょう(笑)
開始残高勘定の記入方法
上図を見てのとおりで相手勘定科目に諸口は使いません。また、この勘定は以後期中には登場しません。なのであまり意味はないのですが、各方法と比較するために紹介してみました。元々大陸式決算法自体は日商簿記検定2級以上の範囲になりますし、準大陸式と違って純大陸式決算法はあまり問題でも見掛けません。簿記初学者は読み飛ばしてもいいと思います。でも国家試験を目指そうとされる方は、いずれはこの辺を見直して欲しい項目でもあります。
開始残高勘定以外の記入方法
その他、開始残高勘定以外の各勘定の開始仕訳転記後の内容です。純大陸式決算法では、この開始仕訳直後において、英米式や準大陸式に比べて開始残高勘定が存在していますので、必然的に仕訳帳と総勘定元帳の貸借合計はその分だけ増えていることになります。ここが純大陸式決算法の大きな特徴になります。