当座借越の処理(日商簿記3級)

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目次と用語解説

目次

  • ガイダンス
  • 現金の処理
  • 当座預金の処理
  • 当座借越の処理
  • 現金過不足の処理
  • 小口現金の処理
  • 三分法の処理
  • 分記法の処理
  • 約束手形の処理
  • 手形の裏書き及び割引き処理
  • 有価証券
  • 固定資産
  • 債権債務1
  • 債権債務2


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当座借越について

当座借越の概要

前回に引き続き当座預金の知識を更に磨いていきましょう。 前回で小切手を振出すことがとても便利だと感じていただけたと思います。しかし、この便利な小切手は好き放題発行することが出来ると思いますか?実はそんなことは出来ないのです。

 冷静に考えたら最終的には発行する側の預金から支払われるのですから、預金残高より多くは発行することが出来ません。うっかり預金残高がないのに発行してしまって、相手が銀行に持ち込んで引き出そうとすると不渡り(ふわたり)と言って会社の信用を失うとても恐ろしいことになるのです。

 なので結構気を使うものなのですが、これから学ぶ当座借越(とうざかりこし)契約をあらかじめ銀行と結ぶことによって、預金残高より大きい金額の小切手を振出すことが出来るのです。例えば、残高がなくても100万円までなら振出しても銀行が立て替えて決済してあげるよ・・・みたいなイメージです。もちろん最終的にはこの立て替えてもらった金額は返さないといけないので、一時的な銀行からの借入金とイメージしてもらっていいです。
預金残高と小切手の発行
上図を見てください。銀行の当座預金の残高が500円しかないのに10万円の小切手を発行しようとしています。 この小切手を受け取った六角おじさんは銀行に持ち込んでも10万円は払って貰えません。なぜなら発行者であるはやしくんの当座預金残高が500円しかないからです。そこで、銀行と当座借越契約を結ぶことによって、当座預金残高を超えた小切手を振出して決済することも可能になるのです。
当座借越契約

当座借越の会計処理

当座借越の内容が簡単に理解できたら具体的な会計処理の方法についてみていくことにしましょう。 例えば10万円の当座借越契約を結んでいたら、当座預金残高が0円でも10万円までは発行しても銀行は支払いに応じます。例えば10万円の買掛金の決済に小切手を振出す場合に、当座預金残高が500円しか無かった場合でも決済は可能です。この場合の仕訳について考えてみましょう。ちなみに預金残高を超えて決済した金額は銀行からお金を借りているイメージになります。つまり負債ですね。
当座借越契約と取引
上図では当座預金残高が500円ですが、当座借越契約(借入限度額)を10万円で結んでいるので決済が可能となるわけです。 それではその具体的な仕訳ですがイメージ出来ますか?10万円の小切手を当座預金勘定の500円と相殺するのですが当然足りません。その足りない分を借り入れを示す当座借越勘定で記入することになります。ちなみ当座借越は当座預金残高が0円以下になることにより限度額まで銀行が貸すものですから、当座預金残高が残っている以上は当座借越など発生するものではありません。
当座借越の具体例
上記具体例で確認してみましょう。当座預金勘定の残高いっぱいまで減少させましたが足らない分を当座借越勘定という負債勘定で表示します。何となく仕訳を確認してイメージしてみてください。大体理解出来たのではないでしょうか。

 余談ですが、当座預金勘定の口座が1つだけの場合は当座預金勘定と当座借越勘定の残高が同時に発生することはありません。しかし、2つ以上の当座預金勘定の口座がある場合は同時に発生することもあります(銀行別に当座預金勘定を設けている場合)。しかし重要性は低いのでここは軽く流してください。それよりも下記の勘定の流れはしっかり押さえて下さい。
当座借越の具体例
上記の例題の仕訳は、この図でいうとオレンジ色の部分になります。実際には掛代金10万円のうち、500円部分のみ支払って残りの99,500円部分は銀行に借りて支払ったイメージになりますので、負債そのものは買掛金は全部減りましたが、当座借越という銀行からの借入金が99,500円増えましたので、実質的に負債は500円しか減ってないところにも注目してみて下さい。

一勘定制の処理

実は今までの処理は当座預金勘定と当座借越勘定を用いた二勘定制と呼ばれる処理方法でした。少し重要性は低くなるのですが、一勘定制と呼ばれる処理方法もあるので紹介しておきたいと思います。この一勘定制は、当座預金勘定と当座借越勘定を合体させた当座(とうざ)勘定と呼ばれる混合勘定を用いて処理することになります。仕訳的には簡単ですので、早速例題を使いながらみていくことにしましょう。
一勘定制の具体例
問題は解けないと思いますので、解答を見比べながら確認して下さい。解答をみていただければ分かると思うのですが、当座勘定が当座預金勘定と当座借越勘定の二つを兼ねています。つまり借方残高になっている場合は当座預金の借方残高を表し、貸方残高になっている場合は当座借越の貸方残高を表しているのです。

 1.の現金の当座預金預け入れの仕訳は大丈夫かと思いますが、当座借越契約を結ぶこと自体は簿記上の取引にはなりませんので留意してください。2.の仕訳のあと、当座勘定が3万円の貸方残高として計上されます。何度も繰り返しになりますが、この3万円は銀行からの借入金の意味がある当座借越勘定の貸方残高を表すことになります。3.は少し補足します。小切手の受け取りは現金の受け取りになるのですが、ただちに当座預金に預け入れているので解答のような仕訳になります。また、一勘定制の場合は当座預金勘定は使いませんので気をつけて下さい。
一勘定制の当座勘定は一人二役

当座借越の練習問題

それでは最後に練習問題を解いて終わりにしましょう。相当難しいので、検定試験を解くように真剣に取り組んでみてください。また、解けないと思ったら今回は解答を見ながら確認して、後日力をつけたときに再度チャレンジして解いてみて下さい。
練習仕訳問題

解答を表示する

今回の練習問題も難しいかなと思われたかもしれません。現時点では解けなくて当たり前ですが、日商簿記検定などの試験ではこのように1つの取引に論点がいくつか含まれている複合取引的な仕訳が多いです。今のうちから少しずつ慣れておくといいでしょう。問2の現金で支払った引取運賃は付随費用として仕入勘定に含めましょう。今回はまだ学習していないので出来なくて当たり前ですが、商品売買の項目で詳しくみます。問3も手付金として一部先払いしている前払金を精算する論点がありごちゃごちゃしやすいのですが、落ち着いてどんな取引が行われているのか、また何が増えて何が減ったのかイメージしましょう。