当座預金と小切手の関係
今回は
当座預金(とうざよきん)と呼ばれる預金について学ぶことにしましょう。預金と呼ばれるものには普通預金や定期預金など一般的になじみのある銀行預金の他に、当座預金と呼ばれる預金もあるのです。
日商簿記3級では、この当座預金をマスターすることが合格の鍵になります。近年では普通預金も多く出題されています。定期預金は検定試験で出題されるのは稀で、現預金と呼ばれるものには「現金」と「普通預金」に「当座預金」、そして後で学ぶ「小口現金」が中心になるのです。今回はこの当座預金を学ぶことにしましょう。
当座預金も
資産のうちの一つで残高は借方残高となります。さて、当座預金は何ぞや?!という前に前回学んだ小切手についておさらいしておきましょう。小切手は受け取ったら換金性が高いので現金と同じに考えて処理するんでしたよね。
今回はこのとまとちゃん(小切手を振り出す)側の立場で考えてみましょう。現金の替わりとなる小切手を発行することは誰でも出来ることはありません。上図のように最初に銀行にお金を預けなければ銀行から小切手帳を貰うことは出来ません。
このとき銀行に開設する預金口座が当座預金口座なのです。つまり当座預金は主に小切手や後で学ぶ手形を振り出すことを目的とした預金口座と言えるでしょう。また、普通預金や定期預金と違って利息はありません。いわゆる無利息口座なのです。そしてその預け入れた金額の範囲内で、小切手を振り出すことが出来るんです。どうです?小切手のイメージが何となく分かってきましたか。
当座預金に預け入れた場合
小切手を振り出すためには当座預金口座にお金を預けなければいけません。
当座預金は資産なので、預け入れると増加して借方が増えることになります。この場合の仕訳に使う勘定科目は「当座預金」です。そのまんまですよね。まあ、習うより慣れろで早速仕訳の練習問題を解いてみましょう。気軽にチャレンジしてください。分からない場合はさっさと解答を見ちゃいましょう。
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ちょっと難しかったかもしれませんが出来なくても全く気にしないで下さい。問3は、一時的に現金で回収していますが、ただちに当座預金に預けているので現金の増加ではなく、当座預金の増加になります。この「ただちに」という言い回しは、検定試験でもよく見掛けますので記憶の片隅にでもとどめておけばいい事があるかも知れません。この問題はどの仕訳も資産の増加と資産の減少の仕訳になります。繰り返しますが、当座預金はあくまで小切手を発行して、商品などの仕入代金を小切手で支払ったりするために必要な銀行口座であって、当座預金そのものが小切手ではありません。
小切手を振り出した場合
さて、問題は小切手を振り出した場合の処理です。
前回の講義で小切手は現金と同じものだ!と説明しました。そう、すぐに現金に換金可能なので現金と同じでいいのですが、自分が発行する場合はどうなのでしょうか。(1)小切手は現金、(2)発行したら現金が減る、(3)だから現金の減少だ。と考えた方は素晴らしいセンスの持ち主だと思います。ただ、残念ながら正解ではありません。答えを言っちゃうと、発行した場合は現金ではなくて当座預金の減少となるのです。どうしてそうなるのでしょうか。早速図解で小切手の一生の流れを見ていくことにしましょう。
小切手を振り出すには、銀行と当座預金口座を開設して小切手帳を貰う必要があります。このとき、当座預金にお金を預けた場合は「当座預金」の増加として仕訳を行います。銀行から貰う小切手帳は前回学んだ小切手ではありません。つまり現金ではありませんよ。くどいようですが、念の為。
小切手を振り出すことが可能となりましたので、仕入れた商品の決済に小切手を振り出して行うことが可能です。この場合のとまとちゃん側の仕訳はどうなるのでしょうか?小切手は現金だから現金の減少?いや待てよ、現金になるのは他人が振り出した小切手で、自分が振り出しているから違うのかな?まあ答えは後のお楽しみにして、とりあえず先に進めますね。実際に小切手を受け取ったおじさん側の仕訳は大丈夫ですか?
前回の内容の復習になりますが、他人(とまとちゃん)振出の小切手はすぐに換金して貰えるので現金と同じに扱うのでしたよね。なので「現金」の増加になるんです。「売上」とか「仕入」とか知らない勘定科目は今の所は気にしないで下さい。
ダイコンを売って大もうけ?!した六角おじさん(お兄さんという噂もあります)は、売上代金として小切手を貰ったので早速銀行に行ってお金に交換してもらう事になりました。銀行はもちろんお金に換えてくれるんです。
銀行Bは換金して受け取った小切手をとまとちゃんから回収しないといけないのですが、手形交換所と呼ばれるところが間に入って仲介してくれます。つまり小切手を手形交換所に持ち込んで、手形交換所は銀行Aのとまとちゃんの当座預金口座より引き落とします。それを銀行Bに支払うイメージになるのです。
つまり上記の事からタイムラグ(時間差)は生じますが、とまとちゃんが小切手を発行すると、最終的にはとまとちゃんの当座預金口座から手形交換所経由で引落しの指令が下るのです。簡単に言うと、小切手の発行は当座預金残高が減るという事です。ここまで来ると先程の仕訳の答えも見えてくるかも知れません。
そうです。自分で振り出した小切手は当座預金残高を減少させることになるので、当座預金勘定の減少として仕訳上は貸方に計上することになります。厳密には引き落としがあった時に仕訳をするべきでしょうが、簿記上では発行と同時に当座預金勘定を減らします。さあ、ここで練習仕訳問題を解いてみましょう。習うより慣れろ。分からない場合は答えを見ながら何となくでいいので雰囲気を感じ取って下さい。
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最初のうちはごちゃごちゃすると思います。小切手の問題が出題されたら、小切手を受け取る立場なのか、それとも小切手を振出す立場なのかを意識するようにして下さい。他人振出の小切手を受け取るときは現金と同様に扱い、小切手を振出すときは当座預金が減少するのです。沢山の問題を解いて慣れて下さいね。