固定資産とは
いよいよ固定資産(こていしさん)について学んでいきましょう。固定資産とは、どんなイメージを持っていますか?固定だから動かない物・・・不動産のことかな?とイメージされた方もいると思います。とてもセンスありますね。
実はほぼその通りですが、簿記の固定資産は長期的に使う資産で利益を得るために貢献する資産をいいます。土地や店舗などの建物は長く使いますし、売上に貢献する資産と言えます。お客さんに商品を売る商店が、店舗を持ってなければ売上を伸ばすのはちょっと大変そうですよね。日商簿記3級で学ぶ固定資産は、土地、建物、備品、車両運搬具の4つが出題されます。まずはこの4つをしっかり覚えましょう。
建物は本社ビルや店舗などで、備品は事務用のデスクやチェア、ロッカーにパソコンなどです。車両運搬具は荷物を運ぶトラックや営業用の車などが該当します。
有価証券の数え方
まずは固定資産を購入した場合の取得原価を考えてみましょう。固定資産は資産項目として購入時には資産を増加させます。取得原価は購入代価に付随費用を足した金額になります。前回学んだ有価証券と同じような処理ですよね。付随費用の具体例としては、仲介手数料、運賃、登記費用、試運転費、据付費など購入した固定資産を使用するために必要な費用をいいます。
固定資産も購入した際には付随費用が発生するのが一般的です。付随費用が発生したときは、必ず固定資産の購入代価に加算して取得原価とします。とりあえずここで簡単な例題を解いてみましょう。
固定資産の減価償却
固定資産は購入当時はピカピカの新品ですが、長く使用するとどうしても古くなって価値が低下したりするものです。例えば営業用の車を100万円で購入して、10年後に100万円で売れるでしょうか?普通は売れませんよね。もし10年後に10万円で売れたとしたら90万円の損です。普通はその90万円分の活躍を10年間でしているハズだと思いませんか?つまりこの車のお陰で10年間売上に貢献してきたと考えられます。言い換えると損失ではなく
収益を得るための
費用と考えます。
そう考えると、売却時に90万円の価値の減少分を売却損として計上するのは感覚的におかしいですよね。10年間の活躍に応じて目減りした価値分を各期間に負担させるべきでしょう。このように、目減りした価値を各期間に費用として配分する手続きを
減価償却(げんかしょうきゃく)といいます。また、どの期間にどれ位の費用を負担させるのかを決める配分方法を
償却方法(しょうきゃくほうほう)といいます。
減価償却は決算に際して行われる決算手続の一つです。但し、土地については使用に伴ってその資産価値が減少する性質のものではないので減価償却は行いません。
減価償却を計算するにあたって次の3つの要素が必要になります。
(1)取得原価・・・購入代価+付随費用
(2)耐用年数・・・固定資産が使用出来る年数
(3)残存価額・・・耐用年数経過後の固定資産の資産価値
償却方法は色々ありますが、
日商簿記3級では定額法しか出題されませんのでここでは定額法についてのみ学ぶことにします。定額法とは毎期均等額を費用化する償却方法です。具体例を使いながら確認していきましょう。
定額法の公式は上図の通りです。この公式で計算した¥200,000を耐用年数50年で均等に費用化していくことになります。建物の資産価値の減少は、建物(資産)の減少として帳簿にも反映させます。この反映した価額を
帳簿価額(または貸借対照表価額)といいます。上図の仕訳で¥10,000,000の建物が1年間で¥9,800,000の帳簿価額になっているのを確認して下さい。このように減少分をダイレクトに固定資産勘定から減額する方法を
直接法(ちょくせつほう)と呼びます。
検定試験ではこれから述べる
間接法(かんせつほう)が多く出題されています。
先程は建物(資産)勘定から直接控除しましたが、間接法では減価償却累計額(固定資産から控除)勘定に計上することになります。減価償却累計額(げんかしょうきゃくるいけいがく)勘定は少し特徴的で、固定資産のマイナス項目となります。難しい言葉で固定資産の評価勘定項目といいます。つまり、帳簿価額は¥10,000,000から¥200,000を差し引いた金額なので、結局は直接法も間接法も建物の帳簿価額は同じ金額で表示していることになるのです。
あまり細かい事は覚える必要はありませんが、固定資産勘定と必ずセットで登場する面白い科目なのです。間接法のメリットは購入時の取得原価(1,000万円)が分かりやすい上に、現在の実質的な固定資産価値(980万円)も把握しやすいのです。それでは腕試し問題を解いてみましょう。
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いかがでしたでしょうか。問1の車両の取得原価は大丈夫でしょうか?取得原価は必ず付随費用を忘れないで下さいね。問2が難しくて悩まれたと思います。減価償却は期中で購入しているので、決算で1年分の減価償却費を費用とするのは間違いになります。この場合は月割りで減価償却費を計算することになります。具体的には3月1日から12月31日までの10ヶ月間分を費用とするのです。減価償却という使い慣れない言葉に最初は苦労すると思いますが、慣れればそれほど難しいとは感じなくなると思います。
また、税法改正との絡みで残存価額が無い出題が多くなっています。必ず問題文で指示がありますので見落とさないようにしましょう。
固定資産を売却したとき
固定資産を売却した場合について考えてみましょう。日商簿記検定3級では、固定資産の売却は大変多く出題されています。重要な論点なのでしっかりとマスターして下さい。また、売却には
期首で売却する場合と
期中で売却する場合があります。それぞれ処理が異なりますので混乱しないようにしましょう。
最初にも述べましたが、100万円で買った車が10万円で売れた場合は90万円の損失になるのが普通の感覚です。しかし、減価償却によって毎期固定資産の一部を費用化しているので、帳簿に計上されている固定資産の帳簿価額は購入時とは違っているハズです。
固定資産を売却した場合は、売却時点の帳簿価額と売却金額との差額が売却損益になります。早速例題を使いながら確認していきましょう。
この問題の場合は、まず売却時(期首)に計上されている備品の帳簿価額を求めます。それから減価償却累計額勘定が、備品減価償却累計額勘定になっています。建物だと建物備品償却累計額です。このような表記のされかたも覚えておきましょう。
さて、売却時の帳簿価額ですが取得価額から減価償却累計額を差し引いた¥225,000になります。要するに取得原価¥300,000だったものが前期以前に使われて期首では¥225,000の価値になっていたと読み取れます。それを¥200,000で売却しているので固定資産売却損¥25,000が出ます。
次に期中で売却した場合を例題を使って確認していきましょう。
まずは売却日である9月30日の備品の帳簿価額を計算します。当期分の減価償却費は計上していないので、半年分の減価償却費を計算して計上すると売却時の備品の帳簿価額は¥50,000になります。当期も備品は使われているので、その分は減価償却を行って費用にしてあげます。そしてこの備品を¥60,000で売却しているので売却益¥10,000が算出されます。
上記のように売却時の減価償却費の仕訳と一緒に合わせて解答しても正解となります。慣れればこちらの方がコンパクトにまとまるのでオススメしますよ。また、検定試験の期中売却の問題では、減価償却費は月割り計算しか出題されませんので、月の途中で売却しても1ヶ月使用したと仮定して減価償却の計算を行って下さい。但し、期首売却の場合は1日も使ってない前提で減価償却は行いません。
最後に復習をかねて、腕試し練習問題にチャレンジしましょう。
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いかがでしたでしょうか。取得原価は購入代価に付随費用を足した金額でした。問2は少し難しかったかもしれませんね。減価償却の計算は正しく出来ましたか?期中に購入しているので決算では月割りで計算します。7月15日に購入していますが、月割り計算なので7月分も1ヶ月分として計算します。問3の売却時も同じく期中売却ですから期首から売却時までの減価償却は月割りで計算して下さいね。