有価証券の処理(日商簿記3級)

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目次と用語解説

目次

  • ガイダンス
  • 現金の処理
  • 当座預金の処理
  • 当座借越の処理
  • 現金過不足の処理
  • 小口現金の処理
  • 三分法の処理
  • 分記法の処理
  • 約束手形の処理
  • 手形の裏書き及び割引き処理
  • 有価証券
  • 固定資産
  • 債権債務1
  • 債権債務2


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簿記検定で使う有価証券とは

簿記検定で使う有価証券とは

有価証券も平成28年度以降の改正により日商簿記検定3級の出題内容が変更となりました。具体的には売買取引のみで、期末評価については2級以後に出題されることになりました。また、勘定科目も「売買目的有価証券」から3級では「有価証券」勘定に変更されています。本講座も新出題区分の内容に従って進めていきたいと思います。

 今回は有価証券(ゆうかしょうけん)について学んでいきましょう。有価証券って一体何なんでしょうか?あまり普段から扱う人は少ないと思うのでイメージが付きにくいかも知れませんね。実は有価証券は単なる紙切れです。紙切れですけどもただの紙切れではないのです。そう、財産価値がある紙切れとイメージして下さい。

 有価証券と言っても様々なものがあります。例えば前回までに学んだ小切手や約束手形も一般的には有価証券と呼ばれているものです。商品券も厳密には有価証券なんです。しかし、簿記検定で学ぶ有価証券は少し限定されます。日商簿記3級で学ぶ有価証券の定義は、株式や、国債や社債などの公社債が該当します。ほぼこの2つしか出題されませんのでそれほど難しくないと思います。

 株式は株式会社が発行するもので、これを購入すると株主と呼ばれて会社の経営に対して口出ししたり、利益が出れば配当金を貰えたりします。国債や社債は、国や企業が借金をするために発行する借用証書みたいなイメージで覚えましょう。どちらも資金調達の目的で発行します。株式は返済義務はありませんが、公社債は返済する義務を負います。検定試験では出題されませんが、豆知識として頭の片隅にでも入れておくとイメージしやすいでしょう。

簿記の有価証券とは何か?

有価証券の数え方

有価証券は株式や国債・社債(公社債と呼びます)のことを言いました。その前に株式や公社債の数え方について触れておきましょう。例えばうさぎは正確には1羽、2羽とも数えたりしますが、1匹、2匹と数えても間違いではないと思います。株式や公社債の数え方は簿記検定ではどのように表現されるのでしょうか。

  それは、株式の場合は1株、2株と数えますが、国債や社債は1口、2口と数えます。馴染みのない数え方なので少し戸惑われるのではないでしょうか。試験で出題される時は1口100円の前提が多いです。具体的には、額面総額1万円の公社債を所有していて1口あたり100円だとすると100口所有していることになります。

  有価証券の数え方

有価証券の購入と売却

それでは有価証券を購入した場合の具体的な処理を見ていきましょう。株式を取得した場合には、何株の株式を買って1株あたりいくらで買ったのかがポイントになります。また、購入に際して購入手数料を支払う場合がありますが、これら付随費用は有価証券勘定に含めて処理をします。

 次に公社債ですが、こちらもどれだけの口数の公社債を1口あたりいくらで買ったのかを把握しましょう。額面総額も与えられると思いますが、公社債に関しては額面総額と同じ金額で売買されるとは限りませんので注意したいところです。また、株式と同じように付随費用が発生する場合は、同じく有価証券勘定に含めて処理します。有価証券は資産項目なので借方の増加になります。下図のグリーンの部分です。

有価証券の購入
日商簿記検定3級では有価証券を購入する側の立場で仕訳を行います。株式を発行したり、社債を発行する会社側の処理は1級以上の内容になるので今の段階では気にしなくて結構ですよ。ちなみに国債を発行する国側の仕訳は簿記検定では永遠に出てきませんので安心して下さい。それでは早速腕試し問題にチャレンジしてみましょう。

練習仕訳問題

解答を表示する

いかがでしたでしょうか。本試験の仕訳問題とほぼ同じレベルで出題しています。問2は2,000口の社債を1口あたり¥98で購入したと分かりましたか?問3は少し難しかったかも知れませんね。広島商店が買ったのは社債ですよね。どれくらいの口数を購入しましたか?これは額面総額から1口あたりの単価で割れば求まりました。そして1口あたり96.50円で購入しています。付随費用も発生してます。計算がややこしいですよね。

 それでも一つ一つ落ち着いて把握しましょう。また、当座借越の項目が絡んでいました。最初は間違えても仕方ないと思います。何度も解き直して理解に努めましょう。また、いずれの仕訳も購入手数料の付随費用は有価証券勘定に含めて処理していることに留意して下さい。

 次に購入した有価証券を売却した時の処理について学びましょう。例えば株式のように1株あたりの株価が日々変動する場合は、購入した時の価額よりも上がっていたり下がっていたりするものです。つまり上がった場合は利益が出ますし、逆に下がった場合は損が出ます。そのような場合はどのように処理するのか学びましょう。

有価証券売却損益の仕訳
基本的に有価証券を売却した際の仕訳は上図のようになります。購入時の金額より売却価格が大きい場合は利益が出ますし、小さい場合は損失が生じます。この時の利益や損失は有価証券売却益(ゆうかしょうけんばいきゃくえき)、又は、有価証券売却損(ゆうかしょうけんばいきゃくそん)勘定を使います。

 ここからは参考ですが、①有価証券の購入時の仕訳と、②売却時の仕訳で利益があった場合の仕訳は、商品売買の分記法の処理と似ていると思いませんか?今回の有価証券やこれから学ぶ固定資産については、売却時に損益を把握する分記法的な処理をしているのです。それでは練習問題を解いてみましょう。

練習仕訳問題

解答を表示する

解けましたか?売却益が出れば貸方に有価証券売却益を、売却損が出れば借方に有価証券売却損勘定で処理します。

 問3は社債の売却の問題です。購入時は1口あたり¥@98で、売却は¥@99なので普通に考えると売却益が出そうですが、購入手数料を含めた取得原価が売却金額より低いので売却損になります。
問3の社債売却の解説

配当金を受け取ったとき

次は株式会社から配当金を受け取った場合の処理について学びましょう。配当金は配当金領収書というものを受け取ります。どこかで聞いたことありませんか?そうです、現金の2-3で先に学びました。あの時は配当金領収書は現金として扱うんだと学びましたよね。今回はもう少し突っ込んで配当金領収書を貰った場合の仕訳を考えてみましょう。

 株式会社は、応援して出資してくれている株主さんに利益を現金で還元することがあります。これを配当金(はいとうきん)と呼んでいます。配当金領収書はその配当金を貰える引換券みたいなイメージです。配当金領収書は、すぐに銀行などでお金に換えて貰えるので現金と同等に扱うのは既に学びました。では、その仕訳はどうなるのでしょうか。

受取配当金の仕訳
配当金領収書を受け取ると、貸方に受取配当金(うけとりはいとうきん)という収益勘定で計上します。これは今回初めて学ぶ項目です。受験生がよく間違えるのは、受取利息や有価証券利息などと混同してしまう間違いです。特に株や社債などの有価証券は、普通の人は日常生活でなかなか扱いませんのでイメージが湧かないのが原因だと思います。

受取配当金の性格

公社債の利息を受け取ったとき

最後に公社債の利息を受け取った場合の処理について確認しましょう。公社債は国や会社がお金を集めるために借金をして発行する借用証書みたいなイメージでした。借金なので定期的に利息を払わないと誰もお金を貸してくれません。なので、公社債を持っていると利払日に利息が受け取れます。先程の株式配当金との違いは大丈夫でしょうか。

 公社債券には利札(りふだ)と呼ばれるものが付いていて、利払日の期限が到来したものを切り取って銀行等に持ち込むと現金に交換して貰えます。ほら、よく割引券のクーポンってあるじゃないですか。そのイメージそのものなので、利札の事をクーポン利息と呼ばれたりします。期限の到来した利札も現金として扱います。これも現金の2-4で学習しました。覚えていますか?それでは期限の到来した公社債の利札がある場合の仕訳を考えてみましょう。

公社債の利息の仕訳
公社債は国や会社の借金なので、言い換えるとお金を貸していることになります。つまり利札は貸しているお金に対して受け取る利息の性格を有しています。なので厳密には受取利息勘定でも間違いとは言えないかも知れませんが、簿記の問題上は有価証券利息(ゆうかしょうけんりそく)と呼ばれる勘定科目を使用します。

 有価証券利息の計算は、額面金額に年利率を乗じて計算します。日商簿記3級では、有価証券利息の計算をさせる問題はあまり出題されないと思いますが、もし出題されても取得原価と利率を乗じて計算しないようにしましょう。

公社債の利息の計算問題
本試験でもこのレベルの問題が解ける程度で十分だと思います。公社債の利息を受け取った場合は有価証券利息勘定で処理するのを忘れないようにしましょう。ちなみに社債を発行している株式会社が利息を払った場合の仕訳は1級の試験範囲になります。

有価証券のまとめ