分記法の処理(日商簿記3級)

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目次と用語解説

目次

  • ガイダンス
  • 現金の処理
  • 当座預金の処理
  • 当座借越の処理
  • 現金過不足の処理
  • 小口現金の処理
  • 三分法の処理
  • 分記法の処理
  • 約束手形の処理
  • 手形の裏書き及び割引き処理
  • 有価証券
  • 固定資産
  • 債権債務1
  • 債権債務2


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分記法について

分記法とは何か?

前回の項目で三分法を学びました。今回は4級の復習になりますが分記法(ぶんきほう)をみていくことにしましょう。日商簿記検定を受験するのは3級から受験される方が多いので、意外と分記法の処理を知らない方が多いのです。念のための復習ですがサラッと読み流して下さい。

 それでは分記法とは何なのでしょうか?実は分記法を使おうが、三分法を使おうが、会社の最終的な目的は同じです。一定期間の収益である売上高から、それに伴う売り上げた商品の原価(商品原価)を算出して差額である儲けを計算・把握することでした。簿記入門講座を思い出して下さい。

 つまり、最終的な目的は同じなのですがその儲けを計算するやり方が分記法と三分法とでは違うのです。違うといっても中身はそんなに難しくはありませんよ。気楽に読んでいただければよいでしょう。
分記法も三分法も最終目的は一緒

分記法の具体的な処理方法(商品を買った場合)

まず、分記法の商品を購入した場合の処理ですが三分法とは全然違います。最初のアプローチの段階で既に違うのです。前回の三分法の項目を思い出して下さい。仕入れた商品は仕入勘定に全て費用として計上しました。ところが分記法は仕入れた商品を「商品」という勘定で資産として計上するのです。何となくこちらの方がイメージしやすいと思います。だって、商品そのものに財産価値がありそうです。財産は資産とほぼ同じ意味ですし、商品が増えたら資産が増えたと考えるのが自然でしょう。
分記法で商品を購入した時の仕訳

分記法の具体的な処理方法(商品を売った場合)

商品を売った場合の処理はどうでしょうか。商品を売った場合、三分法だと売上勘定の貸方に収益として計上しましたね。それは大丈夫だと思います。分記法だとどうでしょう。実はここが三分法と大きく違うところで、販売価格(収益)から商品原価(費用)を差し引いた儲け、つまり商品の売上利益をダイレクトに算出します。
分記法で商品を販売した時の仕訳
簿記入門講座をお読みになられた方はよく分かっていると思うのですが、会社の目的は一定期間の正しい儲けである利益を求めるところにあります。分記法は販売の都度にこの利益を丁寧に、かつ、直接算出するところが大きな特徴と言えます。三分法との違いは下記の仕訳で確かめて下さいね。
三分法で商品を販売した時の仕訳
あまり難しく考えないで下さいね。分記法では貸方の商品販売益は商品を売ったことにより儲けた利益、つまり販売価格からその販売した商品の原価を差し引いた部分です。ダイレクトに会社が求めている儲けを算出しています。この章では割愛しますが、三分法では儲けの計算は販売時には求めません。実は決算時に販売した商品の原価を算出して、儲けである商品販売益を計算します。決算の項目でじっくりみていきますのでお楽しみにして下さいね。

分記法の特徴

分記法の特徴としては、このようにダイレクトに利益を求めるのでやや不親切な面もあります。つまり、下記の勘定一覧をみて頂きたいのですが、現状では儲けの元である販売価格(収益)と商品原価(費用)が表示されません。2,000円の儲けがあるのは一目瞭然ですが、その2,000円を得るための内容が不明瞭です。まるで計算過程が書かれていない数学みたいです。同じ儲けでも1,000円の物を3,000円で売って儲けたのか、99万8千円の物を100万円で売って儲けたのか分かりません。あなたがこの会社の社長だったらどうしますか?細かい内容を知りたいと思わないですか?
分記法の勘定図
分記法の商品勘定は手許にある商品残高を表している(前期に売れ残った分も含まれてます)ので、当期にどれくらい仕入れたのか把握しにくいです。また、商品販売益勘定で利益をダイレクトに計算してしまうので、売上金額が把握しにくいです。

値引き・返品があった場合の処理

前回の三分法でもみていきましたが、値引き・返品があった場合は少し処理がややこしく感じるのですが、要点を押さえてしまえば意外と簡単です。ただし、普段あまり解く機会がないので難しく感じてしまうのです。早速下記の仕訳をみていきましょう。
分記法で返品があった場合の仕訳
まずは返品から。これは単純に売上そのものを取り消す取引ですから逆仕訳をすればOKなのです。貸借逆に仕訳を切って相殺します。これは三分法でも同じですが、返品の場合は手許に商品が戻ってきます。三分法では商品の増減は分かりにくかったですよね。だって値引きも返品も売上(収益)を取り消す処理でしたから。しかし、分記法では商品を買っても売っても返品しても商品勘定(資産)で処理しますので、手許商品の増減がタイムリーに把握できます。
分記法の商品勘定の動き
次は値引きの処理です。値引きは三分法でもみましたが商品が手許に戻ってきませんよ。ここまで読めば返品と処理が違うのかなって想像しますよね(笑)実はそうなのです。返品と同じように逆仕訳を切りません。理由はお分かりでしょうか。逆仕訳をすると商品という資産が増えてしまいます。手許に商品が戻ってきたわけではないので、商品(資産)を増やすのは間違いです。値引きは儲けである商品販売益から減らす処理のみになります。下記の仕訳を参照して下さい。
分記法の値引きがあった場合の仕訳
値引きは儲けを減らしたと考えます。つまり、商品販売益を直接減らすだけの処理になります。もちろん三分法も同じような考え方なのですが儲けの計算自体は決算で行います。これは後日、決算の項目で学ぶことになります。ですから三分法では、値引き・返品時に収益である売上の打ち消し(収益を減らす)の仕訳をするのみになります。念のためにおさらいしますが、収益と利益は全然違うものだというのは大丈夫ですよね?よく分からない方はもう一度入門講座から読み返しましょうね。

(注)商品販売益は収益項目と解説されている場合が多いですが実質は利益です。